「ごっこ」というのは俗称で、正式には「ホテイウオ」といいます。北海道でも特に函館近郊など道南地方でしか獲れない珍しい魚で、冬の旬にしか食べられない珍味でもあります。最近でこそ漁獲された一部のごっこが都内の市場へごく少量のみ出荷されるようになりましたが、それまで東京をはじめ北海道を除く日本全国において、ごっこを実際に見たり食べたりしたことがある人はほとんどいなかったのではないでしょうか。
さて、今日はそんな激レアな魚であるごっこのさばき方と、ごっこの代表的な料理であるごっこ鍋のレシピをご紹介します。
北海道の珍しい魚ごっこの特徴
ごっこのさばき方をご紹介する前に、まずはごっこの特徴について簡単にお話しします。というのも、ごっこは一般的な魚と形状や性質がやや異なるため、さばき方や処理の仕方も違うのです。
写真からもわかるように、ごっこの体はまるでアンコウのようにとても柔らかくコラーゲン質です。歯とエラ、内臓以外のすべてを丸ごと食べることができます。もちろん中骨やヒレも可食部。アンコウよりも可食部が多い魚といえるでしょう。西のフグ、東のアンコウなら北はごっこ──といったところでしょうか。
函館では愛らしい顔つきのごっこがキャラクター化され、可愛いぬいぐるみの土産品として販売されています。
さて、ごっこの最大の特徴といえば、腹についている吸盤です。
そう、実はごっこの腹には吸盤がついており、これは魚の中でもとりわけ珍しい特徴といえるでしょう。
産卵後の幼いごっこは、この吸盤を使って水中に体を固定して過ごしているのだとか。想像するとやっぱり可愛らしいですね。もちろんこの吸盤も食べられます。
北海道の珍しい魚ごっこのさばき方
最近でこそ都内の市場などで見かけるようになりましたが、まだまだ家庭の食卓にはなじみのないごっこ。函館市では、2~3月のスーパーの店頭に所せましとごっこが並びます。函館では定番の大衆的な食材で、旬にはごっこ鍋やごっこ汁が楽しまれています。
実はごっこは全身がコラーゲン質で骨も軟骨質で柔らかいため、さばくのに包丁を使いません。ごっこの体はぬめりがあるため、包丁を使うと刃先が暴れやすくかえって危ないのです。ですので、包丁の代わりに調理バサミを使います。
調理バサミ一つで比較的簡単にさばけてしまうのがごっこの魅力。誰でも簡単にさばけるので、ぜひ挑戦してみてください。
①ごっこを洗う
それではさっそくごっこをさばいていきます。ごっこをさばく前に、まずはタワシで全身を洗いましょう。特に吸盤の周りは汚れがついているのでよく洗ってください。
②腹を開く
次に調理バサミを使って、肛門から吸盤に向かって腹を開きます。今回はメスのごっこを使いましたので、腹の中にはたくさんの卵が入っています。卵はプチプチとした食感がおいしい珍味で大変人気があります。もちろんオスの白子もおいしい珍味です。
③吸盤を取る
ハサミが吸盤に到達したら、周りをグルッと切るようにして吸盤を切り取ります。このように簡単に切り取れます。
卵は後でぬめりを処理するので、ひとまずボウルなどにとっておきましょう。
④歯を落とす
腹を開いて吸盤と内臓をとったら、次は歯を落とします。いくら全身が柔らかいごっことはいえ、歯は固くて食べられません。くちびるに沿うようにしてハサミを入れ、上アゴと下アゴそれぞれの歯を切り取ります。
⑤エラを取る
ごっこの体はほかの魚とずいぶん違いますが、やはり魚は魚。ちゃんとエラがあります。エラは生臭いので取り除いておくのがいいでしょう(アンコウ同様、白くなるまでしっかりと血を洗えば食べられます)。位置が少しわかりにくいので、写真を参考にしてください。開いた腹の中から写真の位置に指を滑り込ませればすぐにわかるはずです。両方のエラをひきちぎって取り除いておきましょう。
⑥血合いを取る
血合いは食べられますし栄養もありますから、ご家庭で楽しむ分にはわざわざ取り除く必要はありません。ただやや生臭さがあるので、においが気になる方はエラと一緒に取り除いておくのがいいでしょう。
⑦湯引きする
内蔵、エラ、歯、血合いを取り除いたら、残った部分はすべて可食部です。ただしまだ全体にぬめりがあるので、このぬめりを取り除くために湯引きします。沸かしたお湯を全体に回しかけると、表面のぬめりが固形化します。全体的に一回り縮むくらいお湯をかけたら、固まったぬめりや汚れを流水でしっかり洗い流しましょう。
⑧ぶつ切りにする
あとは調理バサミを使って、身を食べやすい一口サイズに骨ごとカットするだけです。
⑨卵を処理する
卵もぬめりが大変多いので、米を洗う要領で何度も水を換えながら洗います。ぬめりは生臭さに原因になるので、卵全体がサラサラになるまで根気強く洗ってください。これでごっこ鍋の準備は完了です。
本場函館のごっこ鍋レシピ
ごっこ鍋の材料(2~3人分)
- ごっこ(身、卵、肝臓) 1尾
- 水 1L
- 酒 大さじ2
- 醤油 100ml
- 生海苔 お好みで
北海道の珍しい魚ごっこを使った鍋の作り方
ごっこ鍋の作り方はとても簡単、すべての材料を鍋に入れて煮込むだけです。
和風出汁など余計な調味料を入れると、ごっこの本当のおいしさを味わえなくなってしまうので絶対にNG。ごっこは「北のすっぽん」といわれるほど、豊富なうま味成分を含んでいます。じっくり煮込んでそれを引き出すことで、余計な調味料いらずで雑味のない本当においしいごっこ料理ができあがります。
生海苔をたっぷり加えるのが本場函館流。最後に醤油で味をととのえてください。
ごっこをおいしくいただく秘訣は、とにかく身と卵(あるいは白子)のぬめりをしっかり落としておくことです。特に卵のぬめり処理にはやや手間がかかりますが、ここをしっかりていねいに行うことで、透き通ったおいしい仕上がりになります。
ごっこをさばいてみよう!
ごっこは、魚の中でも珍しいくらいうま味成分を豊富に含んでいるとてもおいしい食材です。簡単にさばける上に調理も簡単にできてしまうので、料理初心者にもおすすめ。市場やスーパーなどで見かけた際はぜひ挑戦してみてください。
魚の締め方を初心者向けに解説!魚を新鮮に持ち帰れる3つの簡単な締め方と道具をご紹介
刺身の切り方で絶対に覚えたい平造り!初心者でもおいしく刺身が切れるポイントを料理ライターが解説
秋旬サンマのアヒージョ!家庭でも簡単に作れる魚料理レシピをご紹介
関連記事スポンサードリンク