しかし、魚というのはとてもデリケートな生き物で、釣った後の処理1つで味に天と地の差が生まれるものです。
ただでさえ魚介は寒い海の中に棲息しています。地上にいるだけで身質へのダメージが蓄積される上、暴れて身を傷めることもあればストレスで味が落ちてしまうことも。
そこで今回は、釣った魚をおいしくいただくために、初心者にもできる「魚の処理方法」をご紹介します。
初心者にもできる!釣った魚を新鮮なまま持ち帰る方法
魚をいい状態で持ち帰るには温度や時間などいくつかの要素がありますが、もっとも重要なのはズバリ「締め方」です。
魚を締めるのは、魚の身体機能を停止させて身質を保つために行います。たとえば魚を生きたままクーラーボックスなどで泳がしておくと、水温や水質の劣化、酸欠やストレスなどで弱っていくことがあります。狭い場所で動き回っていれば魚も疲れますし、身を守るためのウロコだって剥がれ落ちるでしょう。そういう状態で死んでしまった魚の身はおいしくありません。
魚の締め方にはいくつかの方法がありますが、手順さえ覚えれば実は初心者でも簡単にできます。せっかく釣った魚をおいしくいただくためにも、ぜひ習得してください。
絶対習得したい魚の締め方3選
魚の締め方には大きく三つあります。「氷締め」と「活け締め」、そして「神経締め」です。この中で初心者におすすめしたいのが氷締めと活け締め。
いずれの処理も魚を釣ってすぐに行うのがポイントです。魚が弱ってから処理しても十分な効果に期待できませんし、もちろん魚が死んでから締めても意味がありません。
初心者でも新鮮に魚を持ち帰るなら覚えておきたい、魚を締める方法を3つご紹介します。
いちばん簡単な氷締め
氷締めの方法は簡単で、クーラーボックスなどにたっぷりの海水(あるいは海水と同程度の塩水、塩分濃度およそ3%)とたっぷりの氷を入れ、そこに釣れた魚を放り込むだけ。主にアジやイワシなどの小型魚に最適な締め方です。
この締め方のメリットは、釣ってすぐの魚を一度で大量に締められるということ。つまりコスパがいいのです。
もちろん、すべての魚を活け締めしたり神経締めしたりできるならそれがいいでしょう。でも釣り場で、とくにバンバン釣れているときにそんな余裕なんてないですよね。
小型魚向けのコスパ重視の締め方で失敗のしようもないので初心者にオススメですが、中型以上の魚だとこの方法で締めるのが難しくなります。
中型魚以上は活け締めで鮮度を保つ
中型以上の魚におすすめなのが活け締めです。
活け締めは魚が元気なうちにストレスを与えずに締められるのがメリットです。方法は簡単で、包丁やハサミなどをエラの中から急所に差し込んで血抜きをするだけ。急所というのは魚の脊髄と動脈です。
差し込むのは片方のエラからだけで構いません。包丁やハサミでエラの膜を突き破り、骨髄を断つように刺すのがポイントです。
鮮血が出てくるので、すぐにバケツなどに溜めた水の中でザブザブとゆすって血抜きしてください。そのまましばらく水に浸けておけば活け締めの完了。締めてしばらくはまだ心臓が動いているので、心臓のポンプ機能で血が自然と抜けていきます。
この方法は釣り現場でも比較的実践しやすく、かつ鮮度を保つのに有効な方法です。
魚が暴れて手がつけられない場合は、タオルなどで顔を優しく抑えて視界を奪いましょう。
すぐにおとなしくなります。
熟成魚を作るなら神経締め
神経締めは、文字通り魚の神経を抜いて締める方法です。魚の脊髄に神経締め専用のワイヤーを通し、神経を破壊します。
こうすることで脳機能と身体機能が完全に分断され、死後硬直を遅らせることができます。結果、魚の鮮度を長く保てるのがメリットです。魚を熟成させる場合などはこの方法で魚を締めます。
氷締めや活け締めには特別な道具が必要ありませんが、神経締めを行う場合にはいくつかの道具が必要です。
魚の神経締めにあると便利な道具
魚を氷水で締める場合はクーラーボックスと氷・海水を用意するだけで大丈夫です。
しかし少し慣れが必要な、活き締め・神経締めは専用の便利道具があると釣り場でも手早く締めることができます。ここでは魚を締めるのに便利な道具を3つご紹介。
釣れた魚を手早く締めたい方は用意しておくのをおすすめします。
神経締めワイヤー(神経を破壊するために使用)
魚の神経締めに欠かせないのが、神経締め専用の形状記憶ワイヤーです。神経締めをするなら釣ってすぐがいいでしょう。魚体によって脊髄の神経が通っている器官の太さが違うため、魚体サイズによりさまざまなサイズを使い分ける必要があります。
一般的に直径Φ0.5~1.5までのサイズが市販されており、鯛やカツオクラスですとΦ1.0~1.2程度が適切でしょう。大きいサイズのヒラマサなどにはΦ1.2~1.5程度が適当です。
千枚通し(脳を破壊するために使用)
神経締めを行う際は魚にストレスを与えないよう、最初に千枚通しを頭に差し込んで脳を破壊します。ハサミや包丁で代用もできます。
包丁(内臓を処理するために使用)
魚をさばくのに特化した機能を持つ包丁といえばやはり出刃。
神経締めを行った後の魚は、できればエラと内臓を除去しましょう。必須ではありませんが、もし腹腔に寄生虫などが潜んでいた場合、魚が絶命することで腹腔から身への移動する可能性があります。寄生虫による食中毒リスクを避けるために、できるだけ内臓は早めに抜いておきましょう。
クーラーボックス
魚を保存するために必ず使うのがクーラーボックス。釣りを楽しむ方なら必ず持参する必須アイテムかと思います。
神経締めをした後の魚はクーラーボックスで保管しますが、身質を最大限に保ちたいならタオルや新聞紙などで包むのがオススメ。こうすることで衝撃などによるダメージから身を守ることができるほか、身が冷えすぎるのも防げます。
釣った魚を新鮮なまま持ち帰ろう!
魚を上手に処理できれば、調理の仕上がりにも大きな差が出ます。魚を正しく締めて正しく血を抜いた魚とそうでない魚の味は、まるで月とすっぽん。
料理の腕が何ランクも上がること間違いありません。それもそのはず、鮮度がいいうちに魚を締め、腐敗の主な原因となる血液などの体液をしっかり抜いておくことで、魚独特の臭みを抑えられるだけでなく細菌の繁殖も抑えられるのです。
せっかく釣った魚ですから、おいしく調理するだけでなく安心・安全にいただきたいですよね。氷締め、活け締め、神経締めはそのためにとても有効な手段です。ぜひマスターしましょう!
意外と好評「RIPPLE #1 僕たちの遠賀川」
熟成魚や干物を仕込むなら絶対覚えたい神経締めを初心者向けに解説!
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