正直全然イメージわかないんで教えてください!
普段聞きなれない現象ですが、理屈を知れば釣果に繋がるので解説しましょう。
琵琶湖で起こる「全層循環」と「ターンオーバー」は別現象!
一時期、ちょっと話題になった琵琶湖の全層循環について、発生の仕組みと琵琶湖に生息する生き物達への影響を解説していただきます。
「循環」の文字から「ターンオーバー」と同じであると鷹を括らず、仕組みをしっかり勉強してましょう。
琵琶湖のブラックバスが巨大化する理由を徹底解説!どうして、琵琶湖のブラックバスは桁違いにデカくなるのか?
琵琶湖の全層循環とは
琵琶湖で起こる『全層循環』は深呼吸とも呼ばれ、北湖の表層から底層まですべての層の水が混ざる現象を指します。
順を追って解説していきますね。
水は温度によって密度が変わるため、温かい水は上層へ冷たい水は下層という具合に混ざることなく存在します。この水温が急激に変化する層を「水温躍層」と呼びますが、釣り人の場合はサーモクラインと聞くと思い当たる人も多いのではないでしょうか。
この水温躍層は気温が高くなる夏場に表層の水が温められることで発生します。ただ、この層は冬に表層の水温が低下して底層との差がなくなる、もしくはより低くなるとバランスが崩れて混ざり合います。これが琵琶湖の全層循環です。
- 夏に表層水の水温が上昇して水温躍層ができる
- 冬に表層の水温が低下して表層と底層の温度差がなくなる
- 表層から底層まで水が混ざり合う
風や水草の光合成など酸素が供給されやすい表層とは異なり、底層の溶存酸素量(水に溶け込む酸素の量)は多くありません。
もし、全層循環が起こらなければ深い場所に生息する生き物に酸素が供給されにくいため、琵琶湖に生息する底生生物はもちろん、それを捕食する魚にも影響する可能性があります。
琵琶湖の全層循環とターンオーバーとの違いについて
全層循環で「表層と底層の水が混ざり合う」と聞くと、『ターンオーバー』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。
たしかに、原理としては同じですが、全層循環が琵琶湖の北湖で起こる現象を指すのに対して、ターンオーバーは琵琶湖以外の湖や池でも起こります。さらにいうと、水域全体ではなく一部だけで水の循環が起こる場合も当てはまります。
- 全層循環:琵琶湖の北湖で起こる大規模な水の循環
- ターンオーバー:湖や池で起こる大規模および小規模な水の循環
また、全層循環の要因が冬の水温低下である一方、ターンオーバーは秋の急激な表層水温の低下や風(台風)がもとで起こる現象を指すことが多いです。
全層循環が発生する季節と周期について
これまでの解説でも少し述べましたが、全層循環は「冬」に起こる現象です。
夏に暖められた表層の水が冬(1~3月頃)の低気温や雪解け水などの影響で水温が下がり、表層と底層の水が混ざり合います。
ただし、全層循環が毎年冬になれば起こるとは限りません。
1979~2017年度までは毎年確認されていましたが、2018、2019年度と2年にわたって起こりませんでした。これは、暖冬によって表層の水の水温が下がり切らなかったことが原因と考えられています。
2020年度は全層循環が起こっているため、ほぼ毎年といっても差し支えありませんが、温暖化による暖冬が進むと今後は数年に1度の現象になる可能性も否定できません。
全層循環が琵琶湖の生物に与える影響
全層循環は単なる水の循環というわけではなく、琵琶湖の生物に大きな影響を与えます。
それは「溶存酸素量」が要因です。
表層の水は水面から酸素が供給されるので、溶存酸素量は比較的多いといえます。他にも風による撹拌や河川からの流入、水草による光合成など、水深が浅いとそれだけ酸素が取り込まれる機会も多いです。
一方で底層は溶存酸素量が少ないため、酸素が豊富な表層の水が混ざり合う全層循環が酸素を供給する役割を担います。もし、全層循環が起こらなければ底層に酸素が供給されず、貧酸素になってしまうことも。
この状態は、
- スジエビ
- ヨコエビ
- イサザ
など、湖の底付近を生活圏にする底生生物に悪影響を与えます。
琵琶湖底層の溶存酸素量は春から秋につれて減少するため、冬に全層循環で酸素が供給されなければ酸素の少ない状態で1年をスタートしなければなりません。これは、底生生物には死活問題とも言えるでしょう。
全層循環はブラックバスの生態に影響を与えるのか
全層循環は底生生物だけではなく、琵琶湖に生息する「ブラックバス」にも影響を与えます。
全層循環がなければ底生生物の住みにくい環境になるため、場合によっては酸欠で個体数が減少することもあり得ます。すると、エサとなる生き物が減ることで、捕食者であるブラックバスの個体数や栄養状態が悪化する可能性は否定できません。
草食動物が減ればライオンも減るように、ブラックバスは底生生物やその他の生き物によって支えられています。
琵琶湖で釣りをするなら全層循環の仕組みは覚えておいて損はない
琵琶湖は全層循環によって表層と底層の水が混ざり合うことによって、底層まで酸素が供給されます。
溶存酸素量が多いと底生生物には好都合で、捕食するブラックバスにとっても良いことです。一方で、もし全層循環が起こらず特定の種類のベイトフィッシュ(底生生物)が減ったり、悪影響を受けたりすれば、バス釣りのパターンに変化があっても不思議ではありません。
「スジエビやハゼパターンの反応が例年より悪い」といったことも考えられます。また、ディープのベイトフィッシュが減ることで、違うエリアにバスが移動する可能性もあります。
琵琶湖のバス釣りをより深く理解して釣果につなげるためにも、全層循環の仕組みを覚えておきましょう。
どうして、琵琶湖のブラックバスは桁違いにデカくなるのか?
今さら聞けないブラックバスの餌を解説!琵琶湖の生態系を基本に5種類のベイトフィッシュをご紹介
水辺の生き物達の生態、飼育方法、珍しい生き物についての記事をお届けしてますので、どうぞよろしくお願いします。
ソルフレ【Salt&Fresh】
関連記事スポンサードリンク