魚の三枚おろしの手順は初心者でも難しくない!料理ライターが調理基礎をやさしく解説

魚のおろし方には二枚おろしや背開き、腹開きなどいくつかの種類がありますが、三枚おろしさえマスターすればあとは応用で何とかなっちゃいます。三枚おろしは、それほど便利なテクニックです。

とはいえ三枚おろしはただ「上身、背骨、下身」の三つのパーツに切り分けるだけではありません。

魚の身にいかに骨を残さずに切るか、逆に骨にいかに身を残さずに切るか、そしてどれだけ美しく切るかなど課題は尽きないのです。

しかもこれらは、誰にでも挑戦できるような決して高くないハードルです。丸の魚(頭つき丸ごとの魚)を自分でさばければ、魚一尾で刺身、干物、カマの塩焼き、あら汁などを楽しめてしまいますから、家計にも優しいですよ。

三枚おろしは魚料理の基本

魚の三枚おろしの画像

魚料理の基本である三枚おろしというのは、魚の身を上身(うわみ、魚の左半身)、中骨、下身(したみ、魚の右半身)の三つのパーツに切り分けるテクニックです。

刺身を作るときはほとんどの場合、魚を三枚におろします。ほかにも干物などにする場合はパーツに切り分けず、腹から開く腹開き、背中から開く背開きや、塩焼きや煮つけなどにする場合は二枚におろす二枚おろしなどといったやり方もあります。

テクニックを一つひとつ地道に練習し覚えていくのもいいですが、三枚おろしにはほかのおろし方や開き方に必要なテクニックがおおむね詰め込められているので、最初に三枚おろしをできるようになればあとは応用でほかのおろし方にも対応できます。

ですから、初心者であればこそなおさら、まずは三枚おろしにトライするのがおすすめです。三枚おろしは、やり方さえ覚えてしまえば誰にでもできますよ。

三枚おろし以外のおろし方

三枚おろし以外のおろし方についても簡単に紹介しておきます。三枚おろしをマスターしたらぜひ挑戦してみてください。

  • 二枚おろし 魚を上身と下身のパーツにわけます。どちらかの身に背骨が残った状態です。塩焼きや煮つけなど、さまざまな料理に幅広く使えます。
  • 大名おろし 三枚おろしの簡略版といったところです。スピード重視で大胆におろすので、背骨に身が多く残ります。
  • 五枚おろし ヒラメやカレイなどは、魚の体の構造上、五枚におろす必要があります。上身×2、下身×2、背骨の5パーツに切り分けます。
  • 背開き・腹開き 主に干物や焼き物にする際のやり方で、身を切り分けず皮一枚でつないでおきます。腹と背どちらから開くのかは地方によって異なり、どちらが正しいということはありません。小型魚をフライなどにする場合は、背開きにして背骨と腹骨を取り除きます。

大名おろしはやや例外的ですが、魚をさばくにあたって気を付けたいのは、できるだけ身をムダにしないこと。骨や皮などを取り除く際、身を余計に削いでしまわないよう気をつけましょう。




魚の三枚おろしをやってみよう

それでは実際に魚を三枚におろしていきましょう。今回はイナダを使いますが、ヒラメや八角など特殊な形状の魚を除き、三枚おろしのやり方は基本的にどの魚でも同じです。

魚の三枚おろしで使用する道具は、最低限包丁一本と歯ブラシ、キッチンペーパーがあれば大丈夫。あると便利な道具については、手順の中で逐一ご紹介します。

魚の三枚おろし手順1.ウロコを落とす

魚の三枚おろし手順_うろこ落とし

まずは魚のウロコを落とします。

包丁の刃で魚の肌をなでるように落としてください。基本的に尾から頭に向けて包丁を滑らせます。

魚によってはヒレがトゲのように鋭いものもあるので、手に刺さらないよう十分に気をつけてください。ウロコ引きがあると効率的かつ安全に処理できます。

魚の三枚おろしの手順画像

包丁にしろウロコ引きにしろ、力を入れ過ぎて魚の身に負担をかけないよう気をつけましょう。また、ぬめりのある魚の場合は、この段階でぬめりをある程度落とす目的もあるので、ていねいに作業しましょう。

写真のように流水にあてながら処理すると、ウロコが飛び散らなくていいですよ。

魚の三枚おろし手順2.頭を落とす

魚の三枚おろし手順_頭を落とす

次に魚の頭を落とします。祝いの席などに出す料理でしたら、尾頭つきが縁起いいですね。今回は三枚おろしなので、ズバッと落としてしまいます。

刃を入れる位置は、上の写真をご覧ください。胸ビレと腹ビレの後ろ、そして魚の頭のてっぺんを線で結ぶように刃を入れます。ちなみに左手で指さしているのが胸ビレ、右手でさしているのが腹ビレです。

魚の三枚おろし_刃を入れる画像

両側からズバッと包丁を入れて頭を落とします。途中、刃が背骨に当たりますので、グッと力を入れて断ち切ります。

力み過ぎは厳禁。とくに家庭用の三徳包丁などでやろうとすると、必要以上に力を入れることになり、ケガや刃こぼれなどの原因になります。安全に作業するために、ぜひ出刃を一本ご用意ください。

魚の三枚おろし_出刃包丁の必要性

魚の頭が落ちました。頭にはまだカマがついています。魚のカマ焼きのカマです。

そのまま塩焼きにしてもいいですし、オリーブオイル、塩コショウ、ハーブを塗ってグリルにするのもいいですね。魚のエラを取り除けば、頭もお造りの飾りやアラ汁などに使えます。

魚の三枚おろし手順3.内臓を取り除く

魚の三枚おろし手順_内蔵を取り除く

頭を落としたら、次は内臓です。

内蔵を取り除く際は、魚の肛門から包丁を逆さに入れて(逆さ包丁)腹を裂きます。上の写真の刃の先に見えるのが魚の肛門です。

魚の三枚おろし_魚の内蔵を取り除くと途中の画像

このように、できるだけ内臓を傷つけないように開きます。

魚の三枚おろし_内臓処理

内蔵を優しく取り除いたら、血合いを取り除きます。

魚の血合いというのは、背骨にそって見える赤黒い肉です。

魚を焼き物などにする場合、とくにお子さんなどはこの血合い部分が好きな子もいますから、取り除かずそのまま焼くのもおすすめです。

ですが刺身にする場合、ここの部分の生臭さは大敵です。包丁で2、3本、軽く切り込みを入れたら歯ブラシなどでかき出しましょう。

魚の三枚おろし_血合い

中~大型魚の血合処理には、歯ブラシよりもササラなどが便利です。

魚の三枚おろし_血合い処理

血合いをきれいに掃除すると、このようになります。あとはキッチンペーパーで表面と内側の水気をしっかり拭き取ってひと段落。

ウロコと頭を落とし、内臓を取り除くここまでの処理を「水洗い(みずあらい)」といいます。料理人や魚屋さんのように、釣り仲間同士で「水洗いまでやっといて~!」なんて声を掛け合ったら、料理に通じるプロフェッショナルっぽくって格好いいですね。

魚の三枚おろし手順4.三枚おろし

魚の三枚おろし_三枚おろし

水洗いまで終えたので、いよいよ三枚おろしに入ります。

冒頭にお話ししたように、三枚おろしは魚の上身(左半身)、背骨、下身(右半身)の三つのパーツに切り分けます。まずは下身、つまり右半身の肉を切り分けます。今回は腹、背、背、腹の順で包丁を入れていきますよ。

魚の三枚おろし_身の切分け

まずは右半身の腹に、ガイドとなる切り込みを軽く入れます。包丁をまな板に対して水平にするのではなく、刃を少し立てるくらいの気持ちです。

切り込みを入れたら、次はガイドに沿ってさらに奥まで包丁を入れます。このときはまな板に対して水平に近い角度で包丁を扱い、できるだけ背骨に身を残さないよう気を付けます。

魚の三枚おろし_包丁の入れ方

次に、同じく魚の右半身の背中側に同じ要領で包丁を入れます。

魚の三枚おろし_包丁の入れ方_背骨

まずは軽くガイドの切り込みを入れて……

魚の三枚おろし_背骨に沿って包丁を入れる

二手目で深く包丁を入れます。包丁の切っ先が背骨にあたり、カリカリカリという小気味いい感触があれば、しっかり背骨に沿って切れている証拠です。

あとは尾側から包丁を入れ、魚の身を切り離せば一枚完了。

魚の切り身

このとき、腹骨(魚の肋骨。ガンバラともいう)を包丁で断ち切りながら身を切り離します。鯛など骨の太い魚だと、包丁がなかなか進まなくて苦労するかもしれません。

最初はサバやアジ、今回使っているサワラなど、比較的さばきやすい魚から挑戦してください。

魚の三枚おろし_身の切り離し

魚が二枚になりました。ここまでで二枚おろしです。魚の右半身を切り離したので、次は反対側の左半身も同じ要領で切り離します。やることは同じ。今度は背からガイドを入れてから深く包丁を入れ、腹にガイド、包丁を入れます。包丁を背骨に這わせてカリカリいわせることを意識してください。

魚の三枚おろし_身の切分け_完成

身が離れたら魚の三枚おろしの完成です。

刺身を作る際は、ここからさらに腹骨(ガンバラ)や小骨を取り除いたり、皮をひいたりします。今回、三枚おろしはここまで。刺身の作り方についてはまた別途ご紹介できればと思います。

三枚おろしに欠かせない道具

今回は、出刃包丁と歯ブラシ、キッチンペーパーを使って魚を三枚におろしましたが、魚をおろすのにあれば便利な道具をまとめてご紹介します。

魚の三枚おろしに欠かせない道具1.出刃包丁

魚をおろすなら出刃包丁は必須です。安全に作業できるだけでなく、魚をムダなく効率的かつ美しくさばけます。最初の一本なら、小さいものよりも大きめ(刃渡り16cm~)のサイズがおすすめです。

魚の三枚おろしに欠かせない道具2.ウロコ引き

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包丁でウロコを落とすことができますが、ウロコ引きの方が安全&素早くきれいにウロコを落とすことができます。処理が甘いと残っているウロコがまな板や身にくっつくなどして意外とストレスなので、ウロコ引きは意外と重宝します。

魚の三枚おろしに欠かせない道具3.さらし

今回はキッチンペーパーを使いましたが、魚の体や腹の中を拭いたり、包丁やまな板を拭いたりなど、毎回キッチンペーパーを使っていたら消費量がハンパありません。

なので私はさらしを使っています。好きなサイズに切って使えるだけでなく、吸水性が高く乾くのも早いのでかなりおすすめ。何度も洗って使えるのでコスパも最高です。魚用には魚用のさらしを用意し、匂いのつく洗剤などを使わず漂白剤で殺菌してください。

魚の三枚おろしで広がる魚料理の世界

魚の三枚おろしの手順は初心者でも難しくない!料理ライターが調理基礎を解説

釣った魚をおいしくいただくのは、釣り人誰しものあこがれであり目標ではないでしょうか。最初は姿煮や切り身料理などで満足していても、やはり刺身への憧憬があるという人は多いでしょう。

三枚おろしには刺身だけでなく、あらゆる魚料理に展開するのに必要なテクニックがぎっしりと詰まっています。

三枚おろしへの挑戦こそ、魚料理への最初の課題です。ぜひ三枚おろしをマスターして、魚の楽しさやおいしさを存分に満喫してください。

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